EHD and Electrostaic Propulsion Devices (14)
電気流体力学と静電気力による推進装置(14)

電極における表面電荷量の大幅な増大による推力の改善 

2020. 1月
2022. 11. 21
2023. 9. 4

キーワード; EHD、静電気、推進、電荷、静電容量、電界、電極の多重化
Keyword; EHD, Electrostaic, Propulsion, Charges, Capacitance, Electric field, Multiplexed electrode


EHDと静電気による推進装置における推進力は、原理上正負電極に印加される電圧、電界の強さ、表面電荷量に比例する。
推進力改善のため、広い金属板のエッジ部分の構造を多重化した。
その結果、コンデンサ容量が比例的に増大、蓄積電荷量が改善され、推力が大幅に増加する。

下記の左図は、高電圧パルス発生のためのギャップ付きコンデンサを外付けした場合、右図はコンデンサを内部に作成し含めた場合である。
放電後正負電極の電位が同じとなり、推力が発生する。

実験では、EHD推進装置に30kV程度の階段状パルス高電圧が印加されるが、飛び跳ねる(ジャンプする)現象と推力の改善が確認されている。





  EHDデバイス 電極構造内部の例     (A)                         (B)

電極における金属表面電荷量の大幅な増大による推力の改善例  (A)コンデンサを外部に配置、(B)コンデンサを内部に配置




2022. 11.21 追記

EHD推進デバイスにおける多層電極の有効性について、実験結果をまとめました。
以下、参考文献2をご参照ください。

電極となるアルミの広い板状の電極に多層構造を採用し、EHDデバイスの浮上実験を行いました。

実験結果の要約
電極の多層化は浮上力/電力効率と浮上力/装置体積密度の改善に極めて有効となることが実験で確認できた。
電極を多層化しても浮上の閾値電圧は変わらなかった。つまり、電極数を10層以上に増加すると重量は増加するが浮上力も増加することで同電圧で浮上する。
層数が多くなると閾値電圧は増加し、層数がある値で飽和し一定となる。
板の幅が小さい方が効果が大きく閾値電圧は小さくなる。

この実験結果を言い換えると、下記の図の様に重いバルクの金属に高い電圧をかけても浮上しないが、金属の中に小さなキャビティ構造(空洞)を多数持たせることにより、蓄積電荷が大きく改善されて浮上が可能となることを意味する。
ただ、装置を大型化しフレーム等を長くしたり分厚くすると、浮上のための閾値は上昇することも確認した。


図 金属の空洞構造採用のための蓄積電荷改善による浮上効果




2023. 9. 4 追加
電極での電荷量増大による推力の大幅な改善に関して、追記です。
多層電極の金属板と金属板を隔てる何もない空間(スペース)ですが、考察と理論計算を行ったところ、スペースの代わりとして高誘電率を持つ絶縁体に入れ替えした方が推進力がさらに改善されることが分かりました。
下記は実際に製作した多層電極の写真を示します。金属板と絶縁体が層状に交互に重ねられています。
この電極を使用して浮上実験も行い、浮上性能を確認済みです。さらにテスト中です。


写真. 多層電極
A electrode layered with metal and insulator alternatively.

図 多層電極 構造


参考文献
1. T. Saiki, “EHD and Electrostatic Propulsion Using Multiplexed Electrodes”, [viXra:2001.0432] 2020 Jan. 21, 5page.

2. T. Saiki, “Property on Levitation for EHD and Electrostatic Propulsion Device Using Multi-Layered Electrode”,
[viXra:2211.0104] 2022 Nov. 21, 8page